磁石の中で微弱電流と微弱磁界の作用は本質的に異なることを発見
(大容量・低電力消費の磁気記憶素子開発に光)
JSTと東北大学は、強磁性半導体(Ga,Mn)As[ヒ化ガリウムマンガン]を用いて、磁壁が非常に
ゆっくり移動する現象であるクリープ運動の様子を詳しく調べました。その結果、磁石に電流を
流した時と磁界を加えた時とでは、磁壁のクリープ運動が本質的に異なっていることを発見しました。
磁石に外から磁界を加えると、磁石の中にある磁壁を移動させることができます。このことを
利用したメモリーなどの種々のデバイスの考案が従来から検討されてきました。近年、磁界の他に
電流を流すことによっても磁壁を動かせることが実験的に示されました。
本研究チームはこれまでに、強磁性半導体(Ga,Mn)Asに電流を流すことにより(Ga,Mn)Asでは、
1.NiFe[ニッケル鉄]など強磁性金属に比べ2桁程度小さな電流密度で磁壁を移動できること、
2.一定の電流密度(閾(いき)電流密度)以上では磁壁が移動する速度は電流に比例して増加すること、
3.一定の電流以下の微弱な電流を流した時、クリープ運動が生じること
を見出しています。電流による磁壁のクリープ運動は(Ga,Mn)Asにおいて初めて観測された現象です。
今回、クリープ運動の様子を詳細に検討したところ、微弱な電流と磁界ではクリープ運動に本質的に
異なる作用を与えていることが明らかになりました。この研究は、磁性物理学の新たな展開に資すると
共に、磁壁を使った不揮発性磁気記憶素子の安定性を定量的に議論する基礎となります。
一般に、物質中に存在する磁壁のような界面のクリープ運動速度は、外部作用(磁界、電流)の「べき」
(x の2乗などをx の「べき」と呼び、ここでは2が指数) を伴うスケーリング関数で表現することができます。
ここで指数はスケーリング指数と呼ばれます。スケーリング指数の値は、系が物理的に同じ性質を示す
場合に同じ値を持つこと(普遍性)が知られています。
(Ga,Mn)Asを実験試料に、微弱な電流と磁界のそれぞれによる磁壁のクリープ運動を詳細に調べた
ところ、電流と磁界では異なるスケーリング指数を持つことが分かりました。これは、電流と磁界の磁壁の
クリープ運動への作用を等価なものとして物理的に記述できないことを意味しています。また、電流に
対するスケーリング指数はこれまで知られていませんでしたが、理論的解析により今回の実験値に近い
理論値を導出できることが分かりました。
科学技術振興機構プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20070921/index.html
Universality Classes for Domain Wall Motion in the Ferromagnetic Semiconductor (Ga,Mn)As
Science 21 September 2007: Vol. 317. no. 5845, pp. 1726 - 1729
DOI: 10.1126/science.1145516
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/317/5845/1726
国際天文学連合(IAU)の命名ワーキンググループ(WGPSN)が、これまで仮符号だけを
持っていた土星の衛星4個について、固有の名前を発表した。これで名前の付いた
土星の衛星は53個となり、木星の49個を上回った。
IAUが正式に命名した数では、ついに土星の衛星が木星の衛星を逆転した。この数年間、
土星の新衛星発見が相次いだ結果だ。なお、不確かなものも含め仮符号だけがついている
衛星の数では、両者は63個で並んでいる。
命名された衛星は発見の経緯や実際の性質もさまざまで、それは名前の由来にも
反映されている。
49番目の命名衛星となったAntheは、ギリシア神話に登場する巨人族アルキオネウスの
娘に由来する。カッシーニが撮影した画像から発見され、2007年7月に発表されたばかりだ。
ちなみに、カッシーニの画像からはいくつもの衛星が見つかっているが、そのうち2004年に
発見されたMethoneとPalleneの軌道はAntheとひじょうに近い。MethoneもPalleneも
アルキオネウスの娘。3つの衛星の軌道は、ミマスとエンケラドスの間にある。
50番目のJarnsaxa、51番目のGreipは、土星からの距離が約1,800万キロメートルと遠く、
土星の自転とは逆向きに公転する「逆行衛星」だ。最近見つかる衛星にはこのタイプが多く、
北欧神話に登場する巨人の名前をつけるのが通例となっている。
もちろん、JarnsaxaとGreipもこの例にもれない。2006年にハワイのすばる望遠鏡を使った
観測で見つかった。
51番目のTarqeqはイヌイット神話に登場する月の神に由来する。イヌイット神話から
名前をつけられるのは、公転面が土星の自転に対して40度から50度傾いている衛星だ。
こちらも、2007年にすばる望遠鏡の観測で見つかった。
AstroArts
http://www.astroarts.co.jp/news/2007/09/21saturnian_satellites/index-j.shtml
心不全にからむたんぱく質発見 国立循環器病センター
心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるたんぱく質を国立循環器病
センターと大阪大などの研究グループが発見した。心臓への負担が少ない心不全治療薬の
開発につながる可能性がある。米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション
電子版に21日、発表した。
発見されたたんぱく質はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)と呼ばれる酵素の心臓特異型。
12人の重症心不全患者から治療のために切り取った心筋を使い、そこで働く遺伝子を調べた。
すると、心不全の症状の重さと関連の深い遺伝子が特定され、その遺伝子が作りだすMLCKが
少ないと、心不全になる傾向が強いことがわかった。
心筋内のMLCKが足りない熱帯魚を遺伝子操作でつくったところ、心臓収縮の原動力となる
筋細胞内の配列が乱れ、心臓が大きくなって拍動に異常が現れ、心不全と同じ症状になった。
ラットの実験でも、MLCKが心筋細胞内の規則的な配列を維持し、心臓が正常に収縮するために
必要なことがわかったという。
循環器病センターの北風政史・心臓血管内科部長は「弱った心筋を酷使する従来の強心剤は
心臓への負担が大きい。心臓のMLCKの働きを活性化することで壊れた心筋を修復し、
副作用も少ない心不全治療薬の開発につながる」と話す。
朝日新聞
http://www.asahi.com/science/update/0922/OSK200709220018.html
A cardiac myosin light chain kinase regulates sarcomere assembly in the vertebrate heart
J. Clin. Invest. doi:10.1172/JCI30804.
http://www.jci.org/cgi/content/abstract/JCI30804v1
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